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こちらは『自転車競技分離派 シクロクロス観戦オタク、いろんな自転車競技を観に行く』の試し読みページです。 通販サイトはこちらから⇨ヘラジカ書房オンラインショップ


はじめに 自転車競技と出会ってみよう(一部抜粋)

自転車競技、と聞いたときに思い浮かべるのはどんなものだろう。

一般的にはツール・ド・フランスだろうか。野を越え山を越え、何日間もかけてフランス中を自転車で巡る。もしくは、競輪を思い浮かべる人も多いかもしれない。あるいは、マウンテンバイクが崖のような場所を勢いよく下っていく……と連想するのは、なんとなく少数派のように思える。

世界には多種多様な自転車競技があり、競技ごとに異なる特性を持った自転車があり、それぞれの競技に合う脚質の選手がいる。

筆者が一番好きな自転車競技はシクロクロスだ。ロードバイクによく似た自転車で、舗装路も未舗装路も関係なく、時に自転車を押したり担いだりして進んでいく。自転車競技の中でもおそらく一般認知度はそんなに高くないこの競技に、どうしようもなく魅せられてしまった。

シクロクロスにハマったのは、ちょっとしたきっかけで大会に足を運び、実際にレース会場の雰囲気を、レースのおもしろさを体験したからである。正直こんなにハマるとは思っていなかった。今風の言い方をすれば完全に沼に足を滑らせてしまったのだ。

では、他の自転車競技ではどうだろうか? なんらかの自転車愛好家ならば、「なんとなく知っている」「名前は聞いたことがある」という自転車競技がいくつかあると思われる。筆者はいくつもある。そういった、未知の自転車競技の世界に、思いきって足を踏み入れてみるというのはどうだろう。シクロクロスにうっかり足を滑らせたのと同じように、おもしろい出会いがあるかもしれない。そう思い至ったのが、本書のスタート地点だ。

百聞は一見に如かず。本書はサブタイトルの通り、シクロクロス観戦オタクの筆者が、いろんな自転車競技を観に行った体験記である。


(中略)


さて、本書の出発点は、多種多様な自転車競技の現場に足を運んだら何かおもしろいものが見れるかもしれない、という純粋な好奇心である。

冬場にシクロクロスで活躍するトップ選手は、春夏にはロードレースをやっている選手や、マウンテンバイクをやっている選手がいる。ロードレースは何度も観戦したことがあるので、いつかマウンテンバイクのレースを観てみたいと思っていた。しかし、いつか、とか言ってるといつまでも観に行かないものである。思い切って行ってみよう。せっかくだから、気になっていた自転車競技にいろいろ行ってみたい。どんな大会があるかな?と調べていると、ありがたいことに、あの競技でこんな大会があるよ!と教えてくれる方も現れた。また、シクロクロスの運営側に少し足を突っ込むことになったこともあり、さまざまな自転車競技の大会の雰囲気を知っておくといいのではないか、と考えたのも、この自転車競技行脚を始めた動機のひとつである。

本書では、シクロクロス、MTBクロスカントリー・オリンピック(XCO)、BMXレース、トラックサイクリング、サイクルロードレース、BMXフリースタイル・パークの六種類の自転車競技の大会に足を運び、考えたことや感じたことをまとめた。筆者がシクロクロス贔屓な人間なので、全体を通してシクロクロスに軸足を置いた体験記となる。

なお、観戦の際には必ず一眼レフカメラを携えていった。筆者にとっては観戦する=撮影する、という認識になっていて、自転車競技と写真撮影は切り離せないものとなっている。 様々な自転車競技を扱うため、全く馴染みがない人にもわかりやすいよう、極力説明を付け加えたいと思っている。また私が初めて観る競技については、普段からその競技をやったり観戦したりしている人からしたら当たり前な感想もあるだろう。読み手からしたら冗長に感じる部分もあるかもしれないが、お付き合いくださると嬉しいです。また、レースレポートではないので、詳細なレースの展開やリザルトが知りたい場合は各大会サイトやウェブメディアなどを参照してもらえればと思う。恥ずかしながら、写真を撮ることに集中してしまうとレース展開が追えていないことがよくあるので……。