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こちらは『自転車競技分離派 シクロクロス観戦オタク、いろんな自転車競技を観に行く』の試し読みページです。 通販サイトはこちらから⇨ヘラジカ書房オンラインショップ

目次


海からの眺め

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よく晴れて季節外れに暖かい二月のある日、私はカヤックに乗って海の上にいた。

正確に言うとそこはお台場海浜公園のレクリエーション水域上である。そこからはレインボーブリッジをのぞむことができ、反対側に目を向ければシクロクロスのレース会場となっている砂浜が見渡せる。レースを走る選手たちにカメラを向けてみるが、揺れるカヤックから写真を撮るのは難しい。一通りカヤックでの航行と洋上からの観戦を楽しんだあと、丘に戻った。

この日は、五年ぶりに開催されるシクロクロス東京の一日目だ。

シクロクロスとは

まずはシクロクロスについて概要を記しておきたい。

シクロクロス(以下、競技を表す場合はCXと表記する)はサイクルロードレースの選手がオフシーズンのトレーニングの一環として始めたと言われている。成り立ちからもわかるように、メインのシーズンはロードレースやMTB競技のオフシーズンとなる十月ごろ〜二月ごろ。近年では海外ロードレースでCX出身と言われるような選手が活躍していることもあり、ロードレースファンからも注目を集めている競技でもある。

CXバイクは一見ロードバイクのように見えるが、ロードバイクと比べて太いタイヤが履けるようになっていたり、担ぎやすいようになっていたり、悪路を走っても泥が詰まりにくいようになっていたりする。

舗装路と未舗装路両方あるコースを走る。コース上に設置されたバリアー(垂直に立てられた高さ二五〜四〇㎝ほどの板、通称シケイン)や階段といった障害物もこえていく。階段や、乗車で超えられない泥や砂のセクションでは、自転車を担いで自分の足で走ることになるが、担ぎがあるのは自転車競技の中でもシクロクロスだけである。

レースでは一周三㎞前後の周回コースを走る。競技時間が男子エリートなら六〇分、女子エリートなら四〇分〜五〇分になるようにレース中に周回数が決まる(実力別や年齢別のカテゴリーによって競技時間が異なる)。例えば同じコースでも、雨が降って路面が泥々になった日は、ドライな日と比べて周回数が少なくなることもある。