こちらは『自転車競技分離派 シクロクロス観戦オタク、いろんな自転車競技を観に行く』の試し読みページです。 通販サイトはこちらから⇨ヘラジカ書房オンラインショップ
目次
終わってしまった。22-23年のシクロクロスシーズンが。二〇二三年三月末、私はなんとなくうら寂しい気持ちになっていた。
三月中に行く予定だったふたつのローカルレースの日が両方とも雨予報で、結局観戦に行かずにシーズン終了となってしまったのだった。このシーズンの観戦は二月の半ばに行った前橋シクロクロスが最後となり(第七章参照)、なんとなく不完全燃焼に思っていた。
CXの次のシーズンが始まるのは半年後。毎週のようにレース観戦に行っていたそれまでから一転、何をして過ごせば……もちろん自分のロードバイクに乗ったっていいし、自転車以外の趣味もいろいろとある。でも、ちょっとしたCXロスに陥っていたのだ。自転車競技の写真を撮る独特の楽しさは現地観戦でしか味わえない。
そこで思いついたのである。マウンテンバイク(以下MTB)のレースを見に行こう。
かねてよりMTBレース、その中でも冬はシクロクロスをやっている選手が多いクロスカントリー(略すとクロカン)と呼ばれる種目の観戦に行きたいと思っていた。今がその時なのではないか。クロカンのレースで「クップ・ドュ・ジャポン」というシリーズ戦があることは知っていたので、いつどこで開催されるのかをググってみた。
今季「クップ・ドュ・ジャポン」のレースは長野県以西でしか開催されないため、関東圏に住んでいる私としてはどこも遠かった。しかも、公共交通機関のみで行ける会場は皆無。車を運転できない私にはかなりハードルが高いことがわかった。それでも、いろんな会場をグーグルマップでルート検索してみたところ、新幹線輪行をして十五㎞ほど自走することを視野に入れれば辿り着けるかもしれない会場がひとつ見つかった。 そこは兵庫県の菖蒲谷森林公園。レースの開催時期は四月半ば。二〇二三年のシーズンの開幕戦だ。
MTBは山岳地帯や荒野を走るのに適した形状をした自転車である。ざっくり言うとサスペンションがついていたり、比較的太いブロックタイヤを履いていたりする。